■2022年04月05日(火)

【Syberia: The World Before】(ちょいネタバレ)
 物語はケイトが塩鉱山に囚われているところから始まる。詳細は分からないが一応前作(未クリア)からの続きらしい。
 彼女は1作目でニューヨークを出た以降、一度も帰っていないという設定になっている。鉱山を脱出し自由の身になったにもかかわらず彼女は帰る事を頑なに拒む。それは過去3作で良かれと思い行動してきた事が災いしている。

 ある出来事で彼女は一種の虚無感に苛まれるが、脱出時に偶然拾った古い絵に導かれたかのように新たな旅が始まる。
 ストアページには「ケイトがアイデンティティを求めて・・・」とあるが、本作のケイトはどちらかと言えば脇役で、ダナの物語のナビゲーターと言えるかも。

 2005年と1937年の二つのタイムライン(正確には他の年代も)が交互に描かれ、ケイトとダナを繋ぐ糸が次第に手繰り寄せられ、真実に辿り着く過程が素晴らしい。ドラマチックな展開には誰もが一喜一憂するはず。
 昨年惜しくも亡くなったシリーズの生みの親ブノワ・ソーカル氏の起伏に富んだシナリオは、人の運命の過酷さを時には残酷に描き出すが、その根底には氏の愛とやさしさが流れている事は言うまでもない。もしかしたらケイトはソーカル氏の分身なのかも知れない。

 恐ろしく丁寧に描かれる終盤は感動必至。書きたい事は沢山あるが、ネタバレになりそうなので自重したい。果たしてケイトは自分のアイデンティティを見つけられるのか、長い旅は終わりを迎えるのか、糸を手繰った先にダナはいるのか・・・。
 この珠玉の物語を作った氏及びMicroidsには感謝の言葉しかない。
コミュミティでも賞賛の声が多いが、天国のソーカル氏にも届いていると信じたい。R.I.P. Benoit Sokal。15時間でクリア。(満足度5/5)Steam


 
前作の終わりで市民軍に捕まり、ヘリで護送されるケイト。   右:鉱山で監房に同居していたカチューシャ。コミュミティでは二人の親密な描写が、ケイトは〇ズなのか?と議論になっていた。

   
 
主な舞台になる東欧の架空の都市ヴァゲン。2005年になっても、1937年にファシズムが吹き荒れた後遺症が至る所に残っている。   オスカー:今作では活躍の場は少なめ。時々パズルのヒントをくれる。

   
 
左:ダナの恋人レオン。ある捜索隊の山岳ガイドを務める。   バルタヤー高原(ロシアと中国の間に位置する)で謎の生物と遭遇。

   
 
1944年、軍服姿のダナ。   1983年のケイト。

【システム&パズル】
 操作を含めたシステムは簡素化され、攻略もほぼ一本道。フラグ立てでマップを右往左往させられる事もない。
 自分はほぼコントローラーを使ったが、ホットスポットを見つけるにはマウスの方がやり易いかも。

 日本語字幕は男が女口調になったりその逆もあるが、大きなマイナス要素ではない。
 パズルはストーリーを損なわないようにうまく組み込まれ、難易度も自分には丁度よく楽しめた。


【オマケ】
 ラストシーンから考えると続編が有りそうな感じもする。このままシリーズが消えてしまうのは実に惜しい。しかしMicroidsにソーカル氏の遺産を受け継ぐ意思があったとしても、かなりハードルの高い仕事になるのは間違いない。

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